FXを始めたばかりの方にとって、中東情勢と為替相場の関係は少しわかりにくいかもしれません。でも実は、中東で何か起きると原油価格が動き、それが通貨の値動きに直接影響するという、とてもシンプルな仕組みがあるんです。
2025年6月のイスラエル・イラン衝突では、ドル円が一気に148円まで上昇するという場面がありました。このとき「有事のドル買い」という現象が起きていたんです。中東情勢が為替に与える影響を理解しておくと、突然の相場変動にも落ち着いて対応できるようになるはずです。原油市場と通貨の値動きには密接な関係があり、初心者の方こそこの仕組みを知っておく価値があると思います。
中東情勢が為替を動かす仕組みとは?
1. 紛争が起きると原油価格が急騰する理由
中東は世界の原油供給の中心地なので、この地域で紛争が起きると原油の供給が止まるリスクが一気に高まります。市場参加者は「もし供給が途絶えたらどうしよう」と考えて、先回りして原油を買い始めるんですね。
イスラエルとイランの衝突が激化した2025年6月には、原油価格が1バレルあたり数ドル上昇する場面がありました。これは紛争による供給不安が原因だったわけです。原油は世界経済の血液みたいなものなので、中東で何か起きるとすぐに価格が反応してしまうんです。
実際のところ、供給が本当に止まらなくても価格は上がります。市場参加者の心理が価格を動かすという面も大きいんですね。だからこそ、中東情勢のニュースには常に注目しておく必要があるわけです。
2. 原油価格の上昇がドル相場に与える影響
原油は国際市場でドル建てで取引されているので、原油価格が上がるとドル需要が自然と高まります。産油国は原油を売ってドルを受け取り、輸入国は原油を買うためにドルを必要とするという仕組みです。
ただし、原油価格とドルの関係は時代によって変わってきています。かつては原油高になるとドル安になる傾向がありましたが、最近ではアメリカがシェールオイルの生産国になったこともあり、原油高がドル高を招くケースも増えているんです。
2025年の中東情勢緊迫時には、原油価格の上昇と同時にドルも買われるという動きが見られました。これは「有事のドル買い」という現象の典型例だったと思います。
3. 「有事のドル買い」という現象の正体
何か大きな危機が起きたとき、投資家たちは安全な資産にお金を移そうとします。そのときに選ばれるのがアメリカドルなんです。アメリカは世界最大の経済大国で軍事力も持っているので、危機に強い通貨だと考えられているんですね。
2025年6月の中東情勢悪化時には、市場でリスク回避の動きが強まり、ドルが買われました。ドル円は一時148円まで上昇し、円が売られる展開になったんです。これは投資家が「何かあったときはとりあえずドルを持っておこう」と考えた結果だと思われます。
有事の際に基軸通貨であるドルが買われるのは、ある意味で自然な流れなのかもしれません。ドルは世界中の取引で使われていますし、流動性も高いので、いざというときに換金しやすいという安心感があるんです。
「リスク回避の円買い」が起きなくなった理由
1. 昔は「有事の円買い」が常識だった
かつては中東などで危機が起きると、円が買われるのが定番でした。「有事の円買い」と呼ばれる現象ですね。日本は低金利が続いていたので、投資家は円を借りて他の通貨で運用する「円キャリートレード」をしていたんです。
危機が起きると、投資家はこのポジションを解消するために円を買い戻します。その結果、円高が進むという流れになっていました。1990年代から2000年代にかけては、この動きがとても顕著だったんです。
日本が貿易黒字国で経常収支も黒字だったことも、円が安全資産とみなされる理由の一つでした。何か起きたら円を買っておけば安心という雰囲気があったんですね。
2. 2025年の中東紛争では逆の動きが起きた
ところが2025年6月の中東情勢緊迫時には、円が売られるという真逆の展開になりました。ドル円は146円台から148円近くまで上昇し、円安が進んだんです。「有事の円買い」が完全に消えてしまったわけです。
この変化には多くの市場関係者が驚いたと思います。長年信じられてきたセオリーが通用しなくなったわけですからね。停戦合意が発表された後には円が買い戻される動きもありましたが、それでもかつてのような「有事の円買い」とは様相が異なっていました。
市場の常識が変わってしまったことを、トレーダーは痛感したはずです。為替相場では、過去のパターンが必ずしも未来に当てはまらないという教訓になったのではないでしょうか。
3. 投機筋の円ポジション変化が影響している
この変化の背景には、投機筋の円ポジションが大きく変わったことがあります。かつては円買いポジションを持っている投資家が多かったのですが、最近では円売りポジションが積み上がっているんです。
日本の金利が他国と比べて低いままなので、円を売って高金利通貨を買う戦略が主流になっているわけです。そのため、危機が起きたときに円買いの動きが出にくくなってしまったんですね。
むしろ中東情勢が悪化すると、リスク回避で高金利通貨のポジションを手仕舞いする動きが出て、結果的に円売りが進むという皮肉な状況になっています。市場構造の変化が為替の動きを根本から変えてしまったと言えるでしょう。
原油市場と通貨の値動きの相関関係
1. ドル高になると原油価格が下がる仕組み
原油はドル建てで取引されるので、ドルが高くなると原油の価格は相対的に下がりやすくなります。これは単純な話で、ドルの価値が上がれば同じ量の原油を買うのに必要なドルが少なくて済むからです。
逆にドル安になると原油価格は上がりやすくなります。産油国からすれば、ドルの価値が下がった分を補うために原油価格を上げたくなるわけですね。この関係は長年続いてきた基本的なパターンです。
ただし最近では、この関係性が崩れるケースも増えています。アメリカが産油国になったことで、原油高がアメリカ経済にプラスに働き、ドル高と原油高が同時に進むこともあるんです。市場環境によって相関関係が変わるので、注意が必要ですね。
2. カナダドルなど資源国通貨は原油と連動しやすい
カナダドルやオーストラリアドルのような資源国通貨は、原油価格の影響を強く受けます。特にカナダはアメリカへの原油輸出が多いので、カナダドルと原油価格の相関はとても高いんです。
原油価格が上がるとカナダの輸出収入が増えるので、カナダドルが買われやすくなります。逆に原油価格が下がるとカナダドルも弱くなる傾向があります。この関係性を理解しておくと、原油価格の動きからカナダドル円などの通貨ペアの値動きを予測しやすくなるはずです。
オーストラリアドルも鉄鉱石や石炭などの資源価格と連動しますし、ノルウェークローネは北海油田の原油価格に影響を受けます。資源国通貨をトレードするなら、商品市場の動きもチェックしておくべきですね。
3. 原油価格だけでは説明できない複雑な要因
実際の為替相場は、原油価格だけで動くわけではありません。金利差や経済指標、各国の金融政策など、さまざまな要因が絡み合っているんです。原油価格が上がっても、他の要因で円高になることもあるわけです。
2025年の中東情勢緊迫時にも、原油価格の上昇だけでなく、アメリカの金利動向や日本の金融政策への期待などが複雑に影響していました。市場参加者は多くの情報を同時に処理しながら取引しているので、単純な相関関係だけでは説明できないことも多いんです。
初心者の方は、原油価格と為替の関係を基本として押さえつつ、他の要因にも目を向ける習慣をつけるといいでしょう。複数の視点から相場を見ることで、より正確な判断ができるようになるはずです。
中東情勢が緊迫化したときの為替の動き
1. 2025年6月のイスラエル・イラン衝突時の相場変動
2025年6月にイスラエルとイランの軍事的緊張が高まったとき、為替相場は大きく動きました。ドル円は143円台から一気に148円近くまで上昇し、わずか数日で5円近い値動きが出たんです。
この動きは「有事のドル買い」そのものでした。投資家たちが中東情勢の悪化を警戒して、安全資産とされるドルに資金を移した結果です。リスク回避の動きが強まると、こうした急激な相場変動が起きやすくなるんですね。
クロス円も全体的に円安方向に動きました。ユーロ円やポンド円なども上昇し、円が全面的に売られる展開になったわけです。中東情勢が為替相場に与える影響の大きさを実感させられる出来事だったと思います。
2. 停戦合意後は円が買い戻された
その後、中東での停戦合意が発表されると、相場は一転しました。警戒感が和らいだことで、それまで売られていた円が買い戻されたんです。ドル円は146円台まで下落し、数円の戻りが出ました。
この動きを見ると、市場参加者がいかに中東情勢を注視しているかがわかりますね。リスクが高まれば円を売り、リスクが後退すれば円を買い戻すという、シンプルだけど激しい値動きになったわけです。
停戦合意が発表された日の為替市場では、アジア時間から円買いが進みました。ニュースが出た瞬間に相場が反応する様子は、まさにファンダメンタルズ分析の教科書のような展開だったと思います。
3. 市場参加者のセンチメントが短期的に大きく変化する
中東情勢のような地政学リスクが表面化すると、市場参加者の心理は短期間で大きく変化します。朝起きたら相場が全く違う水準になっているということも珍しくないんです。
特に週末に中東で何か起きると、月曜日の市場オープン時に大きな窓が開くリスクがあります。金曜日の終値と月曜日の始値が離れてしまうわけですね。ポジションを持ち越していると、思わぬ損失を被る可能性もあるので注意が必要です。
センチメントの変化を読み取るには、ニュースを常にチェックする習慣が大切だと思います。市場がどんなリスクを意識しているのか、何を材料に動いているのかを理解することで、急な変動にも対応しやすくなるはずです。
FX初心者が中東情勢で注意すべきポイント
1. 週末の有事発生は月曜の窓開けリスクがある
FX市場は土日が休みなので、週末に中東で大きな出来事があると、月曜日の市場オープン時に価格が飛んでしまうことがあります。これを「窓開け」と呼ぶのですが、初心者の方には特に注意してほしいリスクなんです。
たとえば金曜日に145円でポジションを持っていたとして、週末に中東で紛争が激化したとします。月曜日の朝、市場が開いた瞬間に148円からスタートするということもあり得るわけです。損切り注文を入れていても、その価格では約定せず、大きな損失になる可能性があります。
週末にポジションを持ち越すかどうかは、慎重に判断すべきですね。中東情勢が不安定なときは特に、リスク管理の観点から週末前に一旦決済することも検討した方がいいかもしれません。
2. 地政学リスクは長期化することもある
中東情勢のような地政学リスクは、短期間で解決しないこともあります。紛争が長引けば、その間ずっと為替相場がボラティリティの高い状態になるんです。
数週間、場合によっては数か月にわたって相場が不安定になることもあるので、長期的な視点でリスクを考える必要があります。短期トレードだけでなく、スイングトレードや長期投資をしている方も、地政学リスクの動向には注意を払うべきでしょう。
リスクが長期化すると、トレンドそのものが変わってしまうこともあります。それまで円安トレンドだったのが、中東情勢をきっかけに円高トレンドに転換するといったケースもあり得るわけです。
3. 情報収集とリスク管理が何より重要
中東情勢のような突発的な材料に対応するには、日頃からニュースをチェックする習慣が欠かせません。経済指標だけでなく、国際情勢にも目を向けることが大切なんです。
リスク管理の面では、レバレッジを抑えめにすることも重要だと思います。高レバレッジで取引していると、想定外の値動きで一気に資金を失う危険があります。特に初心者の方は、まずは低レバレッジで経験を積むことをおすすめします。
損切りラインをあらかじめ決めておくことも忘れずに。「ここまで下がったら必ず決済する」というルールを自分で作って、それを守る習慣をつけることが長期的な成功につながるはずです。
まとめ
中東情勢と為替相場の関係について、初心者向けに解説してきました。地政学リスクは突然発生することもあるので、日頃から情報収集とリスク管理を意識しておくことが大切ですね。
- 中東紛争で原油価格が急騰しやすい
- 原油はドル建て取引でドル需要に影響
- 有事のドル買いが主流になっている
- 有事の円買いは消えつつある
- 資源国通貨は原油価格と連動する
- 2025年6月は5円近い急変動があった
- 週末の有事は窓開けリスクに注意
- 地政学リスクは長期化する可能性も
為替相場は複数の要因が絡み合って動くので、原油価格だけでなく金利差や経済指標なども総合的に見る必要があります。中東情勢の動向に注目しながら、冷静な判断を心がけていきましょう。初心者の方も、今回紹介した基本を押さえておけば、突然の相場変動にも少しずつ対応できるようになるはずです。