複数ポジションを同時に持った場合どうなる?資金管理を誤った典型例を解説

ケーススタディ

FX取引を始めて少し慣れてくると、複数のポジションを同時に持ちたくなる瞬間があるかもしれません。チャンスが複数見えたときや、損失を取り戻そうとして新しいポジションを追加するケースですね。でも、これが実は初心者が最も陥りやすい落とし穴なんです。

複数ポジションを同時に持った場合どうなるのか、資金管理を誤るとどんな事態になるのか、この記事では典型的な失敗例を交えながら解説していきます。特にFX初心者の方には、証拠金維持率やロスカットのリスクがどう変化するのかを理解しておくことが大切です。実際の数字や計算方法も含めて、わかりやすく説明していきますね。

複数ポジション保有で何が起こる?

1. 必要証拠金が積み上がる仕組み

複数のポジションを持つと、当然ですが必要証拠金も増えていきます。例えば、1つのポジションに4万円の証拠金が必要な場合、3つ同時に保有すれば12万円の証拠金が必要になるという単純な計算です。

ところが、多くの初心者が見落としがちなのは、口座残高全体に対する証拠金の割合なんです。10万円の資金で4万円のポジションを1つ持つのと、3つ持つのでは、口座への負担がまったく違います。前者は余裕がありますが、後者は資金の大部分を使い切っている状態ですね。

この「積み上がり」を意識せずにポジションを増やしてしまうと、気づいたときには身動きが取れない状況になっているかもしれません。証拠金がギリギリだと、ちょっとした値動きで大きな問題に発展するリスクが高まります。

2. 証拠金維持率が急降下するリスク

証拠金維持率というのは、簡単に言えば「今の口座資金が必要証拠金の何倍あるか」を示す指標です。この数値が下がると、ロスカットされる危険性が高まります。

複数ポジションを持つと、必要証拠金が増えるだけでなく、含み損も複数発生する可能性があるんです。仮に3つのポジションすべてが同じ方向に動いて損失を出したら、証拠金維持率は一気に急降下します。100%を切るとロスカットが執行される業者が多いので、そうなる前に対処しなければなりません。

特に初心者の方は、証拠金維持率を常にチェックする習慣がないケースが多いですよね。複数ポジションを持つなら、この数値を頻繁に確認することが必須になります。

3. 管理が複雑になり判断ミスを誘発

1つのポジションだけなら、損益の状況も一目瞭然です。でも、複数のポジションを同時に持つと、どれがプラスでどれがマイナスか、トータルでどうなっているのか、把握するのが一気に難しくなります。

この複雑さが、冷静な判断を妨げる要因になるんです。例えば、1つのポジションで損切りすべき状況なのに、他のポジションの含み益と相殺できるかもしれないという期待から、損切りを先延ばしにしてしまうケースがあります。

また、どのポジションをどのタイミングで決済するか、優先順位をつけるのも初心者には難しい作業です。結果的に、最悪のタイミングで最悪の選択をしてしまうリスクが高まります。

資金管理を誤るとどうなるのか?

1. ロスカットまでの距離が一気に縮まる

資金管理を誤って複数ポジションを持つと、ロスカットラインまでの距離が驚くほど近くなります。例えば、証拠金維持率が200%あれば比較的安全ですが、複数ポジションで必要証拠金が増えれば、同じ口座資金でも維持率は120%や150%まで下がる可能性があります。

ロスカットは、証拠金維持率が一定水準を下回ると強制的にポジションが決済される仕組みです。多くの業者では100%や50%がラインになっていますが、複数ポジションを持っているとあっという間にこのラインに到達してしまうんです。

特に高レバレッジで取引している場合、わずか数pipsの値動きで証拠金維持率が大きく変動します。複数ポジションを持つなら、ロスカットまでの余裕を常に意識しておくことが重要ですね。

2. 想定外の損失が同時多発する

複数ポジションを持つということは、複数の損失リスクを同時に抱えるということです。1つのポジションだけなら損失は限定的ですが、2つ、3つと増えれば、それぞれが同時にマイナスに動く可能性もあります。

特に注意したいのが、相関性の高い通貨ペアで複数ポジションを持つケースです。例えば、ユーロ/ドルとポンド/ドルは似た動きをすることが多いので、両方で買いポジションを持っていたら、ドルが強くなったときに両方とも損失を出す可能性が高いんです。

想定外の損失が同時多発すると、精神的にも追い詰められますし、口座資金が一気に減ってしまいます。こうなると冷静な判断ができなくなり、さらに悪い選択をしてしまう悪循環に陥りがちです。

3. 冷静さを失い損切りタイミングを逃す

複数のポジションで損失が出始めると、多くの人はパニック状態になります。「どれを先に損切りすべきか」「もう少し待てば戻るかもしれない」といった迷いが生じて、結局どれも損切りできないまま時間が過ぎていくんです。

損切りのタイミングを逃すと、損失はどんどん膨らんでいきます。特に複数ポジションを持っている場合、1つのポジションの損失が他のポジションにも影響を与えて、証拠金維持率が急速に低下していきます。

冷静さを失うと、本来なら絶対にやってはいけない「ナンピン」、つまり損失を平均化するためにさらにポジションを追加するという行動に出てしまうこともあります。これは資金管理の観点から見ると最悪の選択です。

典型的な失敗パターンはこれだ

1. 高レバレッジで複数エントリーして即退場

FX初心者に最も多い失敗パターンが、高レバレッジで複数のポジションを同時に持ってしまうケースです。レバレッジ25倍で3つも4つもポジションを持てば、わずかな値動きで口座資金が大きく減ります。

例えば、10万円の資金でレバレッジ25倍を使えば、最大250万円分の取引ができます。これを3つのポジションに分散させたとしても、それぞれが大きな金額の取引になりますよね。相場が思惑と逆に動けば、あっという間にロスカットされて退場です。

高レバレッジは魅力的に見えますが、複数ポジションと組み合わせるのは非常に危険です。初心者のうちはレバレッジ5倍以下、ポジションは1つか2つに抑えるのが賢明でしょう。

2. 相関性の高い通貨ペアで同時に損失を抱える

先ほども少し触れましたが、相関性の高い通貨ペアで複数ポジションを持つのは典型的な失敗パターンです。ユーロ/ドルとポンド/ドル、あるいはオーストラリアドル/ドルとニュージーランドドル/ドルなど、似た動きをする通貨ペアは意外と多いんです。

これらの通貨ペアで同じ方向にポジションを持っていると、実質的にリスクを分散できていません。むしろ、同じリスクを2倍、3倍に増幅させているだけです。相場が逆方向に動いたとき、すべてのポジションで同時に損失が発生して、一気に資金が減ってしまいます。

分散投資のつもりで複数ポジションを持つなら、相関性の低い通貨ペアを選ぶことが大切ですね。ドル円と豪ドル円のように、異なる要因で動く通貨ペアを組み合わせる方が、リスク分散の効果が期待できます。

3. ポジポジ病で無計画にポジションを増やす

「ポジポジ病」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。常にポジションを持っていないと落ち着かない、チャンスを逃したくないという心理から、無計画にポジションを増やしてしまう状態のことです。

この病気にかかると、明確な根拠がないままポジションを追加してしまいます。「さっきのポジションで損したから、今度こそ取り返そう」とか、「こっちの通貨ペアも動きそうだから入っておこう」といった感じです。

ポジポジ病の問題は、資金管理がまったくできなくなることです。気づいたときには5つも6つもポジションを持っていて、証拠金維持率がギリギリという状況に陥ります。こうなると、ちょっとした値動きでロスカットされるリスクが非常に高くなりますね。

複数ポジションを持つ際の正しい考え方とは?

1. 証拠金維持率は常に200%以上をキープする

複数ポジションを持つなら、証拠金維持率は最低でも200%以上を維持することが推奨されます。これは、必要証拠金の2倍以上の資金が口座にある状態ですね。

200%という数字は、ある程度の値動きに耐えられる最低ラインと考えられています。これより低い維持率でポジションを持つと、わずかな逆行でロスカットのリスクが高まります。理想を言えば、300%以上の維持率を保つのが安全です。

証拠金維持率を計算する式は、「有効証拠金÷必要証拠金×100」です。有効証拠金は口座残高に含み損益を加減したもので、必要証拠金は保有しているすべてのポジションの証拠金合計になります。この計算を常に頭に入れておくことが大切ですね。

2. 相関性の低い通貨ペアで分散させる

複数ポジションを持つメリットを最大限に活かすなら、相関性の低い通貨ペアを選ぶことが重要です。例えば、ドル円とユーロポンドのように、異なる経済圏の通貨を組み合わせると、リスクを本当の意味で分散できます。

相関性が低い通貨ペアを選べば、1つのポジションが損失を出しても、もう1つのポジションは利益を出している可能性があります。これによって、口座全体の資金の増減が安定しやすくなるんです。

ただし、相関性を完全に把握するのは難しいので、初心者のうちは無理に複数ポジションを持つ必要はありません。まずは1つのポジションで確実に利益を出せるようになってから、徐々に複数ポジションに挑戦するのが賢明でしょう。

3. 同時保有は2〜3ポジションまでに制限する

複数ポジションを持つとしても、同時保有は2〜3ポジションまでに制限するのがおすすめです。これ以上増やすと、管理が複雑になりすぎて、冷静な判断ができなくなるリスクが高まります。

2〜3ポジションであれば、それぞれの損益状況を把握しやすいですし、必要に応じて素早く損切りや利確の判断ができます。また、証拠金維持率も計算しやすく、リスク管理がしやすいですね。

初心者の方は、まずは1ポジションから始めて、慣れてきたら2ポジションに増やすという段階的なアプローチが理想的です。いきなり複数ポジションを持とうとするのは、失敗のもとになります。

初心者が守るべき資金管理の鉄則

1. 余剰資金だけで取引する

FX取引は、必ず余剰資金だけで行うべきです。生活費や貯金など、失ってはいけないお金を投入するのは絶対に避けなければなりません。

余剰資金とは、万が一すべて失っても生活に支障が出ない金額のことです。この原則を守らないと、損失が出たときに精神的なプレッシャーが大きくなり、冷静な判断ができなくなります。

特に複数ポジションを持つ場合、リスクが高まるので、余剰資金の範囲内でさらに慎重に取引する必要があります。「この金額を失っても大丈夫」と思える範囲で取引することが、長期的に成功するための基本です。

2. 1回の取引で失うリスクは資金の2%以内に抑える

資金管理の鉄則として、1回の取引で失うリスクは資金の2%以内に抑えるというルールがあります。例えば、10万円の資金なら、1回の取引で失ってもいい金額は2,000円までです。

この2%ルールを守れば、連続して損失を出しても口座資金が急激に減ることを防げます。仮に5回連続で負けても、資金の10%しか失わないので、まだ十分に取引を続けられますね。

複数ポジションを持つ場合、すべてのポジションの合計損失が資金の2%以内に収まるように調整する必要があります。これを守らないと、複数ポジションのリスクが一気に膨らんで、大きな損失につながる可能性が高いです。

3. レバレッジは5倍以下を目安にスタートする

初心者がFX取引を始めるなら、レバレッジは5倍以下を目安にするのが安全です。日本のFX業者では最大25倍までレバレッジをかけられますが、高レバレッジはリスクも高いんです。

レバレッジ5倍であれば、10万円の資金で50万円分の取引ができます。これでも十分な取引規模ですし、損失が出たときのダメージも限定的です。慣れてきたら徐々にレバレッジを上げていくという段階的なアプローチが賢明でしょう。

複数ポジションを持つ場合は、さらにレバレッジを抑える必要があります。2つのポジションで合計レバレッジが5倍になるように調整するなど、全体のリスクを常に把握しておくことが大切ですね。

まとめ

複数ポジションを同時に持つと、必要証拠金が積み上がり、証拠金維持率が急降下するリスクが高まります。管理も複雑になり、判断ミスを誘発しやすくなるので注意が必要です。

資金管理を誤ると、ロスカットまでの距離が一気に縮まり、想定外の損失が同時多発する可能性があります。冷静さを失って損切りタイミングを逃すと、さらに大きな損失につながるでしょう。

典型的な失敗パターンを知っておくことが重要です。以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 高レバレッジでの複数エントリーは即退場のリスク
  • 相関性の高い通貨ペアでの同時保有は危険
  • ポジポジ病による無計画なポジション追加は避ける
  • 証拠金維持率は200%以上を常にキープ
  • 相関性の低い通貨ペアで真の分散を実現
  • 同時保有は2〜3ポジションまでに制限
  • 余剰資金だけで取引する
  • 1回の取引リスクは資金の2%以内

複数ポジションを持つなら、証拠金維持率を常に確認し、相関性の低い通貨ペアを選び、同時保有は2〜3ポジションまでに制限することが大切です。初心者は余剰資金だけで取引し、1回の取引で失うリスクは資金の2%以内に抑え、レバレッジは5倍以下から始めるのが賢明でしょう。資金管理をしっかり行えば、複数ポジションも怖くありませんね。

クロイ

学生時代に統計を学んだ経験から、数字やデータをもとにした分析を得意としています。普段のトレードではテクニカル分析を中心に、シンプルで誰でも実践しやすい手法を大切にしています。

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