全世界株と米国株の併用について考えたことはあるでしょうか。新NISAが始まって以来、全世界株式インデックス(オルカン)とS&P500をどう組み合わせるべきか悩んでいる人は多いようです。
実は両方を持つことで、リターンとリスクのバランスが微妙に変化するという興味深いデータがあります。全世界株と米国株の併用はリスク分散になるのか、それとも米国株比率が高まりすぎて意味がないのか、シミュレーションを交えながら見ていきましょう。
全世界株と米国株を両方持つとどうなるのか?
全世界株と米国株を併用すると、実際のポートフォリオがどうなるのか気になりますね。結論から言うと、両方を持つことで米国株の比率がかなり高くなってしまうという特徴があります。
1. 両方持つと米国株比率が約80%に集中する仕組み
全世界株式インデックスには、すでに米国株が約60%含まれています。そこにさらにS&P500を組み合わせると、米国株の比率は簡単に80%を超えてしまうのです。
たとえば全世界株50%とS&P500を50%ずつ持った場合、米国株の実質的な比率は約80%になります。これは分散投資というよりも、ほぼ米国集中投資に近い状態ですね。全世界株だけで十分分散されていると思っていたのに、併用することで逆に偏りが生まれてしまうのは意外かもしれません。
2. リターンの変化をシミュレーションで見てみると
過去のデータを使ったシミュレーションでは、併用パターンによってリターンが変化することが分かっています。全世界株100%、S&P500を100%、そして両者を組み合わせたケースで比較してみると面白い結果が出ています。
過去10年間のデータでは、S&P500が年率約13%、全世界株が年率約10%のリターンを記録しました。両者を半分ずつ組み合わせた場合、リターンはその中間の約11〜12%程度になるという計算です。米国株を多めに持つほどリターンは高くなる傾向がありますが、それは同時にリスクも高まることを意味しています。
3. リスク(ボラティリティ)は実際どう変わるのか?
リスクという観点で見ると、併用してもあまり変わらないというのが実情です。全世界株のボラティリティ(価格変動の大きさ)は年率約18%、S&P500は約19%程度とされています。
両者を組み合わせても、ボラティリティは18〜19%の範囲内にとどまります。つまり、リスク分散効果はほとんど期待できないということですね。全世界株には米国以外の国々も含まれていますが、米国市場の影響が大きすぎるため、併用してもリスクが劇的に下がるわけではないのです。
併用するメリットはあるのか?
リスク分散効果が薄いとはいえ、併用することに全くメリットがないわけではありません。自分の投資スタイルや考え方次第では、併用が理にかなっているケースもあります。
1. 米国の成長を厚めに取り込みたい人には選択肢になる
米国経済の成長をもう少し厚めに享受したいという人には、併用は合理的な選択肢です。全世界株だけだと米国比率は約60%ですが、S&P500を追加することで米国比率を70%、80%と調整できます。
米国市場は過去数十年にわたって世界をリードしてきた実績があります。GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)をはじめとするテクノロジー企業の成長力は圧倒的ですね。その恩恵をより多く受けたいと考えるなら、併用は一つの手段になるでしょう。
2. 心理的な安心感とポートフォリオの調整がしやすい
併用することで、心理的な安心感を得られるという側面もあります。全世界株だけだと「米国株をもっと持っておけばよかった」と後悔するかもしれませんし、S&P500だけだと「米国以外にも分散しておくべきだった」と不安になるかもしれません。
両方持つことで、どちらに転んでもある程度納得できるポートフォリオになります。また、市場環境に応じて比率を調整しやすいというメリットもありますね。米国の調子が良いときはS&P500の比率を上げ、不安なときは全世界株の比率を高めるといった柔軟な対応ができます。
3. リスク分散効果は期待しづらいという現実
ただし、リスク分散という観点では大きな効果は望めません。前述の通り、両方持っても米国比率が高まるだけで、ボラティリティはほとんど変わらないのです。
真の分散を求めるなら、新興国株や債券、REITなど全く異なる資産クラスを組み合わせる必要があります。全世界株とS&P500の併用は「分散投資」というよりも「米国比率の調整」と考えた方が正確かもしれませんね。
併用のメリット・デメリット比較
| 項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| リターン | 米国の成長を厚めに取り込める | 中途半端なリターンになる可能性 |
| リスク分散 | 心理的な安心感が得られる | 実質的な分散効果は薄い |
| 管理のしやすさ | 比率調整が柔軟にできる | 管理の手間が増える |
| 米国比率 | 自分で調整できる | 80%超えで米国集中になる |
併用する場合のデメリットとは?
併用にはメリットもありますが、当然デメリットも存在します。特に初心者の場合、デメリットを理解せずに併用してしまうと後悔するかもしれません。
1. 米国比率が高まりすぎて分散の意味が薄れる
最大のデメリットは、米国比率が高まりすぎることです。全世界株を選んだ理由が「分散投資したいから」だった場合、S&P500を追加することで本来の目的から外れてしまいます。
米国比率が80%を超えると、ほぼ米国株に集中投資しているのと変わりません。米国経済が好調なときは良いですが、不調になったときのダメージは大きくなります。分散投資のつもりが、実は集中投資になっていたというのは本末転倒ですね。
2. 管理の手間が増えるという地味なデメリット
併用すると、管理の手間が地味に増えます。一つの銘柄だけなら設定して放置すればいいですが、二つ持つとリバランスを考える必要が出てきます。
毎月の積立額をどう配分するか、相場環境に応じて比率を変えるべきか、といった判断を継続的に行う必要があります。投資に時間をかけたくない人にとっては、この手間は意外とストレスになるかもしれません。シンプルに一つの銘柄に絞った方が、精神的にも楽だという意見は多いです。
3. リターンが中途半端になる可能性もある
併用することで、リターンが中途半端になるリスクもあります。S&P500が大きく上昇した年には「もっとS&P500の比率を高めておけばよかった」と後悔し、全世界株が勝った年には「全世界株だけにしておけば」と思うかもしれません。
結局のところ、どちらが勝つかは事前には分かりません。中途半端な比率で持つことで、どちらの恩恵も十分に受けられないという状況になる可能性があります。思い切ってどちらか一つに絞った方が、結果的に満足度は高いかもしれませんね。
どんな人に併用が向いているのか?
併用が向いているかどうかは、投資家のタイプによって大きく変わります。自分がどのタイプに当てはまるか考えてみると良いでしょう。
1. 米国の成長には期待したいけど不安もある人
米国経済の成長力には魅力を感じるけど、米国一本に絞るのは不安という人には併用が向いています。全世界株をベースにしつつ、S&P500を少し加えることで米国比率を高められます。
この組み合わせなら、万が一米国が不調になっても全世界株の部分が下支えしてくれます。逆に米国が好調なら、S&P500の部分でしっかりリターンを得られますね。どちらに転んでも「完全に外した」という状況は避けられるでしょう。
2. 全世界株だけでは物足りないと感じる人
全世界株を持っているけど、もう少しリターンを狙いたいという人にも併用は選択肢になります。全世界株の年率リターンは約10%程度ですが、S&P500を加えることで11〜12%を狙えるかもしれません。
ただし、リターンが高まる分リスクも上がることは理解しておく必要があります。「もう少しだけリスクを取ってもいい」と考えられる人には、併用は合理的な選択です。リスク許容度と相談しながら決めることが大切ですね。
3. 投資比率を自分で調整したい人
ポートフォリオの比率を自分でコントロールしたい人にも併用は向いています。全世界株一本だと米国比率は約60%で固定されますが、S&P500を追加することで70%、80%と自由に調整できます。
市場環境や自分の考えに応じて柔軟に比率を変えられるのは、併用の大きなメリットです。投資に積極的に関わりたい、自分で判断したいというタイプの人には満足度が高いでしょう。
併用が向いている人の特徴
- 米国の成長に期待しつつもリスクヘッジしたい
- 全世界株だけでは物足りなさを感じる
- ポートフォリオを自分でカスタマイズしたい
- 投資に時間をかけることに抵抗がない
- リバランスなどの管理を楽しめる
FIRE(セミリタイア)を目指すなら併用はありなのか?
FIRE(経済的自立・早期退職)を目指す人にとって、全世界株と米国株の併用は有効な戦略なのでしょうか。FIREに必要なリターンとリスクのバランスを考えると、答えは人によって変わってきます。
1. FIREに必要なリターンは年利4~7%が目安
FIREを実現するには、年利4〜7%程度のリターンが必要とされています。4%ルール(資産の4%を毎年取り崩す)を前提にすると、インフレ率を考慮して年利6〜7%は確保したいところです。
全世界株の過去平均リターンは約10%、S&P500は約13%ですから、どちらもFIREに十分なリターンを期待できます。併用した場合は11〜12%程度になるため、FIRE達成には問題ないレベルですね。重要なのはリターンの安定性で、極端な暴落時にも耐えられるポートフォリオを組むことが求められます。
2. 安定したリターンを狙うなら全世界株1本も選択肢
FIREを目指す上で重視すべきは、リターンの高さよりも安定性かもしれません。S&P500は高リターンですが、米国市場に集中するため暴落時のダメージが大きくなります。
全世界株は約50カ国に分散投資するため、一国の不調が全体に与える影響は限定的です。FIRE後は収入が限られるため、大きな損失を避けることが最優先になります。そう考えると、全世界株一本でシンプルに運用する方が精神的にも安心かもしれませんね。
3. 米国集中でリターン重視かバランス重視か判断が分かれる
結局のところ、FIRE達成までのスピードを優先するか、安定性を優先するかで戦略は変わります。若くてリスク許容度が高いうちは米国株中心でリターンを最大化し、FIRE達成が近づいたら全世界株の比率を増やすという方法もあります。
併用は、この中間的な戦略として機能します。リターンとリスクのバランスを取りながら、自分のペースでFIREを目指せるというメリットがありますね。ただし、管理の手間が増える点は考慮する必要があります。
実際のシミュレーション例を見てみよう
理論だけでなく、具体的なシミュレーションを見ると理解が深まります。全世界株100%、米国株100%、そして併用パターンで比較してみましょう。
1. 全世界株100%の場合の資産推移
全世界株に毎月3万円を20年間積み立てた場合、年率10%のリターンを仮定すると資産は約2,270万円になります。元本は720万円ですから、運用益は約1,550万円という計算です。
安定したリターンが期待できる一方で、S&P500と比べるとやや控えめなリターンになります。ただし、約50カ国に分散されているため、米国市場の暴落時にも比較的ダメージを受けにくいという特徴があります。長期的に安心して持ち続けられるのは大きなメリットですね。
2. 米国株100%の場合の資産推移
S&P500に毎月3万円を20年間積み立て、年率13%のリターンを仮定すると資産は約3,160万円になります。元本720万円に対して運用益は約2,440万円と、全世界株を大きく上回ります。
過去のデータを見る限り、S&P500のパフォーマンスは圧倒的です。ただし、米国市場に集中するため、米国経済が不調になった場合のリスクは高まります。また、過去のリターンが将来も続く保証はない点には注意が必要です。
3. 全世界株50%+米国株50%の併用パターン
全世界株とS&P500を半分ずつ、つまり各1.5万円ずつ積み立てた場合、年率約11.5%のリターンを仮定すると資産は約2,640万円になります。全世界株のみと比べて約370万円、S&P500のみと比べて約520万円少ない結果です。
リターンは中間的ですが、リスクも中間的になります。どちらか一方に賭けるのが怖いという人には、心理的に受け入れやすいポートフォリオかもしれませんね。ただし、実質的には米国比率が約80%になることは忘れないようにしましょう。
積立シミュレーション比較(月3万円×20年間)
| パターン | 想定年率 | 最終資産額 | 運用益 |
|---|---|---|---|
| 全世界株100% | 10% | 約2,270万円 | 約1,550万円 |
| S&P500を100% | 13% | 約3,160万円 | 約2,440万円 |
| 併用50%ずつ | 11.5% | 約2,640万円 | 約1,920万円 |
併用する場合のおすすめ比率とは?
併用すると決めた場合、次に悩むのが比率です。全世界株とS&P500をどのくらいの割合で持つべきか、いくつかのパターンを見てみましょう。
1. 全世界株60%+米国株40%でバランスを取る
バランス重視なら、全世界株60%、S&P500を40%という比率がおすすめです。この比率だと米国株の実質比率は約76%(全世界株の60%分+S&P500の40%)になります。
分散効果を残しつつ、米国の成長も取り込めるバランスの良い配分です。リターンとリスクの両面で、極端に偏らない構成になりますね。初めて併用する人には、このくらいの比率が無難かもしれません。
2. 全世界株70%+米国株30%でリスクを抑える
リスクを抑えたい人は、全世界株70%、S&P500を30%という比率が良いでしょう。米国株の実質比率は約72%に抑えられ、より分散された構成になります。
この比率なら、米国市場が不調になっても全世界株の部分がしっかりと下支えしてくれます。リターンはやや控えめになりますが、安定性を重視する人には適した配分です。FIRE達成後など、リスクを減らしたい時期にはこの比率が安心ですね。
3. 自分のリスク許容度に合わせて調整する方法
最終的には、自分のリスク許容度に合わせて比率を決めるのがベストです。年齢、資産状況、投資経験、性格などによって最適な比率は変わります。
若くてリスクを取れるうちはS&P500の比率を高めにし、年齢を重ねるごとに全世界株の比率を増やすという戦略も有効です。また、市場環境に応じて比率を見直すことも大切ですね。自分の投資方針と照らし合わせながら、納得できる比率を見つけることが重要です。
併用以外の分散投資の選択肢
全世界株とS&P500の併用以外にも、分散投資の選択肢はたくさんあります。真のリスク分散を目指すなら、他の資産クラスも検討してみましょう。
1. 全世界株に日本株を組み合わせる方法
全世界株に日本株インデックスを追加する方法もあります。全世界株における日本株の比率は約5%と小さいため、日本株を別途持つことで日本への投資比率を高められます。
為替リスクを抑えたい人や、自国バイアスを持ちたい人には良い選択肢です。また、日本株は米国株と値動きが異なることが多いため、分散効果も期待できますね。ただし、日本経済の成長率は米国に比べて低いため、リターンは控えめになる可能性があります。
2. 全世界株に新興国株を追加してリスク分散
新興国株式を組み合わせることで、より高い成長を狙えます。全世界株にも新興国は含まれていますが、比率は約10%程度です。
新興国株を別途持つことで、中国、インド、ブラジルなどの高成長国への投資比率を高められます。ただし、新興国株はボラティリティが高く、政治リスクや為替リスクも大きいため注意が必要です。リスクを取れる人向けの選択肢と言えるでしょう。
3. 債券やREITを組み合わせて安定性を高める
株式以外の資産クラスを組み合わせることで、真の分散投資が実現できます。債券は株式と逆の動きをすることが多く、ポートフォリオの安定性を高めてくれます。
またREIT(不動産投資信託)を加えることで、不動産という別の資産クラスに分散できます。株式100%のポートフォリオに不安を感じる人は、債券やREITを10〜30%程度組み入れることを検討してみると良いでしょう。リターンは下がりますが、精神的な安心感は大きく向上しますね。
まとめ
全世界株と米国株の併用は、一概に良い悪いとは言えません。米国比率が80%程度になるため、真の分散投資とは言いづらい面もありますが、米国の成長を厚めに取り込みたい人には合理的な選択です。大切なのは、自分の投資目的とリスク許容度をしっかり理解した上で判断することですね。
なお、併用以外にも日本株や新興国株、債券など様々な選択肢があります。一つの組み合わせに固執せず、定期的にポートフォリオを見直すことで、より自分に合った投資スタイルが見つかるかもしれません。投資は長期戦ですから、焦らずじっくり考えていきましょう。

